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ケガの功名
Author:
Satashi PM
*闇の戦士たちとの過酷な戦いで、指を骨折してしまったなぎさは、何のために戦っているのか疑問を…。
Rated: Fiction T - Japanese - Romance - Nagisa M. & Honoka Y. - Chapters: 3 - Words: 24,196 - Reviews: 1 - Published: 02-23-10 - Status: Complete - id: 5770669
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 私は鼻歌交じりに家の玄関を開けて、前庭に歩いていった。

「おばあちゃま、ただいま!」

 声をかけながら足を止める。

「ただいま、忠太郎。良い子にしてた?」

 忠太郎がわんっと吠えて、私の前でははばかることをしに走

っていってしまった。

 そのまま中に入ったけれど、おばあちゃまは部屋にはいなか

った。台所に行ってみると、テーブルに置き手紙が置いてあっ

た。手にとってみると、中にはお金と、メモが入っていた。私

は声に出して読んだ。

「ほのかへ。今日は、昔なじみの友達が訪ねてきてくれたので、

一緒に食事に出かけます。ほのかも今夜はお友だちと一緒に外

食なさい。いつもほのかが行きたがっていたフランス料理のお

店に予約を入れておきましたからね…

 頬が熱くなった。

 つ、つまり、論理的に表現するなら、これって、なぎさとの、

ううん、生まれて初めてのデート…!

 

ケガの功名

Broken

By:Satashi

Translated By: Female Trouble 

  

第3話

 

 ほのかは鏡を覗き込んで、鼻にまたメイクを加えた。思った

ほど痛みは残っていなかったが、まだ治りきる途中だったので、

全快するまでは手を加える必要があった。

 自然な感じでメイクしたので、傷跡はほとんど目立たなくな

ったが、ほのかは気になって何度も鏡に顔を近づけてみながら、

耳にイヤリングを付けた。

「これでよし…どうかしら?」

「とてもきれいミポ」

 ミップルが励ますように言った。

「今夜はどうしてそんなにウキウキミポ?なぎさとは何度も一

緒にお出かけしてるのにミポ」

「今夜は特別なの」

 そう言うと、ほのかはネックレスをつけた。

「今夜はね、ただのお出かけじゃなくて、デートなんだもん」

 ほのかは腰のところにフレアのついたライトブルーのドレス

をまとい、それにマッチした白のハイヒールを履いた。髪を上

げ、ほつれ毛を顔や首元に垂らした。

「やり過ぎになってなきゃいいけど…

 ノックの音がして、ミップルが返事をした。

「どうぞミポ!」

 なぎさが扉を開けて、着ていたシャツの衿のボタンを直しな

がら、そろそろと中に入った。

 なぎさはカーキ色のズボンを穿き、黒のドレスシューズを履

き、渋い青系の白いシャツを着て、黒っぽいタイをゆるく締め

ていた。

「こんな格好、ありえないってばあ」

 半分不満そうになぎさ。

「あのバカバカしい校内美人コンテスト以来、またこんな服を

着るなんて…

「あら、すごくかっこいいわよ」

 歩み寄ってほのかが言い返す。

「それに、あれはチャリティだったんだから。藤村くんのあの

カッコを思いだしてみて」

 少女たちは思い出し笑いを漏らした。なぎさはタイを締め直

そうとした。

「ほら、やってあげる」

 ほのかが手を出して、タイをきちんと締めた。

「わざわざ私のドレスに合わせたりしなくてもよかったのに」

 ほのかの両手がなぎさの襟にまわり、まっすぐにしてタイを

きちんと直した。

「あ、いや、まともな服なんてこれくらいしか無かったってだ

け」

 なぎさがジャケットをはおって、親友に向かってポーズを決

める。

「似合ってる?」

「カンペキメポ!」

 メップルがなぎさのジャケットの内ポケットから顔を出して

言った。

「あんたには訊いてない!」

「かっこいい…

 ほのかはミップルを抱き上げ、ポーチに入れて、さらにハン

ドバッグに入れた。

「準備できたわ」

「じゃ、行こっ」

 なぎさが腕を差し出すと、ほのかがクスッと笑ってその手を

とった。

***

「うひゃあ…!」

 件のレストランと、テーブルが空くのを待っている人々が店

を取り巻いている様子に、なぎさは息を呑んだ。

「ほのか…こんなところに入っても大丈夫なの?」

「心配ないわ、おばあちゃまが予約してくださったんだもの」

「ほのかのおばあちゃんって、もしかしてわたしたちのこと、

とっくにお見通し…

「ほら、なぎさ」

 ほのかがデート相手を入口まで連れて行くと、今度はなぎさ

がほのかのために扉を開けた。

「なぎさ、ジェントルマンポポ!」

 ポルンがほのかのポーチの中からウキウキで叫んだ。

「ポルン、良い子にしてるって約束よ!」

 黒髪の少女は慌てて囁いて静かにさせたが、その声に何人か

が不審の目を向けた。

「あ、あは…すみません、ケータイを切り忘れて…

 ほのかはいそいそと建物の中に入った。

「お二方、ようこそいらっしゃいました」

 ウェイターが入ってきた二人を迎えた。

「テーブル席がご希望ですか?」

 完全に男女カップル扱いの言葉に、ほのかは思わず口に手を

当てて笑みがこぼれるのを隠したが、なぎさは気にしないふり

をして、これ以上照れてしまわないようにした。

「予約を雪城で入れていますが」

「はい、承っております。こちらへどうぞ」

 ウェイターが二人をテーブルに案内して、メニューを渡した。

飲み物の注文を受けると、ウェイターはその場を去って二人っ

きりにしてくれた。

「やっぱりわたしって、女の魅力が無いんだなあ」

 なぎさは頭を抱えて溜息をついた。

「まあまあ」

 ほのかがテーブル越しに手を伸ばして、なぎさの頭をぽんぽ

んと叩いた。

「着ている服のせいよ。ドレスを着たらかわいくなるわ」

「ホントに?」

 なぎさが片目を開けてほのかを見やる。

「当然よ」

 そう言ったほのかだったが、キョトンとしてしまった。親友

がいきなり真っ青になったかと思うと、メニューを前に立てて

顔を隠してしまったのだ。まもなく誰かが二人のテーブルに歩

み寄ると、ほのかを覗き込んだ。それが誰なのか、ほのかには

すぐにわかったが、先に口を開いたのは相手の方だった。

「雪城さん、ずいぶんおめかししてるね」

 なぎさの父、美墨岳が陽気に声をかけてきた。

「今夜は一段とキレイだね。デートかい?」

「は、はい」

 ほのかが恥ずかしそうに言った。

「どうもこんばんは」

 岳がほのかのデート相手に声をかけ、握手の手を差し出す。

「この子は私の友人ですので、どうぞよろしく」

 何の反応もなかったので、岳がまた声をかけた。

「失礼ですが、お名前は?」

 大照れのほのかを残して逃げ出すことなんかできない、まし

てやどうやったって正体がばれてしまう、と観念して、なぎさ

はメニューを下ろした。

「お父さん…

「なぎさっ!」

 岳はほのかを見やると、なぜだか頬をほんのり紅く染めてい

るし、なぎさに視線を戻すと、我が娘は指をモジモジさせてい

るので、はっと悟った。

「ははあ…なるほど!」

 困ったように首筋を掻くなぎさの父。

「そうかあ、邪魔をする気はなかったんだ」

 岳は立ち去りかけたが、ふと娘に振り返った。

「なぎさ」

「は、はい」

 父親を見上げるなぎさ。

「もう少ししたら戻ってきてくれるね。なぎさがいなくて寂し

いよ」

 なぎさにウィンクする父。

 ここ数日ではじめてなぎさは、また家族に笑顔で向き合える

気がした。

「うん、お父さん。明日には帰るから」

「じゃ、二人でごゆっくり」

 何度か手を振って、なぎさの父はそのまま立ち去ると、部屋

の反対側のテーブルでなぎさの母と落ち合った。

「よかったわね」

 飲み物が出されて、ほのかが口を開いた。

「お父さんはわたしのこと、わかってくれてると思うけど…、

…お母さんは…

 少しして、部屋の向こうから何やら取り乱したような声がし

たが、すぐに静かになった。

「あれは…たぶん…

「まずかったかしら…

***

「ね、映画でも見に行く?」

 レストランを出て、もう肌寒くなった夜の空気の中を歩きな

がら、なぎさが訊いた。

「わたしがおごるから」

「うん、うれしい」

 風が吹き抜け、ほのかはちょっと身をすくめた。剥き出しの

腕をさすろうとするより早く、肩からジャケットが掛けられた。

「ありがとう」

 ほのかがなぎさのジャケットの襟をきゅっと締める。

「女の子への最高のふるまいよ、これ」

「そうなの?」

「どうやったら私が幸せになるか、いつだってわかっているん

だもの」

 身を寄せてきたほのかに、なぎさは腕を回して抱き寄せる。

「ほら、ね?」

「あはは、そうかもね。でも、もうこういうカッコはヤダな。

次のデートにはわたしもドレスが着たい」

「そうね!口紅もつけてね。口紅つけたなぎさって見たことな

いもの」

「ちょっとお、極端なんだってば!」

「私の口紅貸してあげる!メイクもしてあげる!」

 半信半疑のデートの相手に、ほのかはニッコリ笑った。

「なぎさって、いじり甲斐があるんだもん」

「もう、仕返しならもうとっくにされてるんだから。ほのかの

せいで、みんなから『S・K』って呼ばれてるし」

「S・K?何の意味なの?」

 なぎさは真っ赤になって、進行方向をまっすぐ見つめた。

「なんでもない、気にしないで。…あ、見て!」

 なぎさが小さな店を指差した。

「ここで何か飲み物でも買っていこうよ。そしたら映画館で割

高なものに無駄なお金を払わなくていいし」

「映画館に飲み物を持ち込みするの?」

「そのとおり!」

 Vサインを出すなぎさ。

「すぐ戻るね!」

 そう言ってなぎさはいきなり駆け出すと、店に入って行って

しまった。

「なぎさったら、どこでそんなこと覚えたのかしら?」

 声に出してそう言ったほのかは、ミップルかポルンが返事を

してくれると思っていたのだが、あに図らんや、返事はすぐ隣

から聞こえてきた。

「お父さんから」

 なぎさの母である美墨理恵が歩み寄ってきた。

「うちの人も今おんなじこと店の中でやってるわ」

「おばさま、こんばんは」

 会釈して挨拶するほのか。

「こんばんは、雪城さん」

 なぎさの母が微笑みかけた。

「今夜はデートだったんですって?」

「…はい」

 少し目を伏せ、ほのかは当惑した。

「お気に障りました?」

「ちょっとビックリしたけど、だいじょうぶ。なぎさが幸せな

ら、ね」

 苦笑する理恵。

「でも今は、私と一緒じゃ幸せじゃないみたい」

「もう大丈夫だと思います」

 ほのかが顔を上げ、励ますように笑顔を向ける。

「あの日はちょっと運が悪い日だったんです。病院でもらった

お薬が、ちょっと効き過ぎてたんです」

「もう、お父さんってば、ケチなんだから!」

 なぎさの笑い声と共に、父娘はそろって店から出てきて、そ

れぞれの相手の元に戻ってきた。

「あ、お母さん、こんばんは」

「まあ、なぎさ」

 理恵は娘を抱きしめたが、なぎさには居心地が悪かった。

「困らせてごめんなさいね!」

「お母さん、デートの相手の前なんだから、恥ずかしいことし

ないでってば!」

 照れ隠しになぎさが文句を言った。

「おやおや、今夜はずいぶんとお連れが多いようだな」

 新たに響き渡った声に、四人ははっとあたりを見回した。

「出たわね、ベルゼイっ」

 ほのかとなぎさは直感的に上空を見上げた。四人の真上に闇

の戦士が二人浮いていた。

「ホワイトがひどい目にあうポポ…

 ポルンが震え声で言った。

「怖いポポ!ほのか、そばにいてポポ!」

「こっちにっ」

 なぎさの声に、両親も顔を上げた。四人が店の脇の路地に駆

け込むと、なぎさが親友に囁いた。

「ほのか、突き当たりで左に曲がって、お父さんとお母さんを

わたしから引き離して!」

「逃がしはしない!」

 ジュナが四人の目の前に降りてきて、立ちふさがった。

「決着をつけてやるぞ」

 ベルゼイが背後に着地する。

「まずいわ」

 ほのかがなぎさと並んだ。

「二人とも、下がっているんだ」

 岳が前に進み出て、ジュナに向き合った。

「私が時間を稼ぐから、みんなはその隙に逃げなさい!」

「あなた、無茶よ!」

 止めようとする理恵を尻目に、夫はもう身構えていた。

「かわいいもんだ」

 嘲ったジュナが、拳を構えて突進してきた。

「今夜最初の犠牲者はお前に決定だ!」

 即座に二人の少女は屈み込むと、同時に両足を地面に滑らせ

るように払って、岳の足を引っかけたので、岳は仰向けに倒れ、

ジュナの攻撃は上に逸れた。

「お父さん、ヒーローのまねなんかしなくていいから!」

 なぎさが叫んだ。

「おじさま、すみません!」

 ほのかが言う。

 岳は立ち上がったが、ジュナがぱっと背後に飛び退いて逃げ

道を塞いだ。なぎさは肩越しにジュナを見やった。唇をペロッ

と舐め、なぎさは父親に向き直った。倒れた拍子に打った背中

をさすっていたが、他にはケガはしていない。

「お父さんとお母さんを傷つけるわけにはいかない…

 独りごちたなぎさは、目を閉じ、心の中で葛藤していた。

「巻き込むわけにはいかない…ぜったいに…

「なぎさ!」

 ほのかが再びなぎさに並んだ。

「ほのか!」

 なぎさが目を開けた。目尻に微かに涙が光っていた。

「ごめんね、でも…

 言いかけたなぎさに、ほのかがミップルを片手に、そして反

対の手にはクイーンのカードを掲げた。

「傷つけるわけにはいかない、でしょ?」

 ほのかは親友に笑いかけた。

「なぎさなら、私でも、そしておばあちゃまでも、同じように

するもの」

「当然!」

「しゃべるか戦うか、どっちにするんだ!?」

 ベルゼイが嘲る。

「なんだってのよ!」

 なぎさはポケットからメップルを取り出し、クイーンのカー

ドを掲げた。

「相手になるわ!」

 ほのかもそう言って、カードをスラッシュした。

「デュアル・オーロラ・ウェーブ!」

 声を合わせて叫びながら、なぎさも同じようにカードをスラ

ッシュした。一瞬目も眩む光が放たれ、再び二人が姿を現した。

 なぎさとほのかの立っていた場所に、いま立っているのはプ

リキュアだった。

「光の使者、キュア・ブラック!」

 なぎさが叫んだ。

「光の使者、キュア・ホワイト!」

 ほのかも叫ぶ。

「ふたりはプリキュア!闇の力のしもべたちよ!とっととおう

ちに帰りなさい!」

「ちょっとは変わったことが言えないのかね」

 そう言って、ジュナが攻撃をしかけようとしたが、そこにキ

ュア・ブラックが割って入り、親友に代わって言い返した。

「闇の力のしもべたちよ!お尻を蹴られて吹っ飛ばされる前に、

とっととお家に帰りなさい!」

 なぎさがポーズを決め直し、二人の闇の戦士にびしっと指を

突きつけた。

 なぎさを一瞬睨みつけた闇の戦士たちが、どっと押し寄せて

きた。

「お二人は、ここから逃げてくださいっ」

 キュア・ホワイトがなぎさの両親に向かって言った。二人は

路地の塀際で娘が戦う姿を目にして、ショックで何も言えなく

なっていた。

「早くっ!」

 ほのかの声に、二人は我に返った。

「私が駆け出したら、お二人はここを離れてください、急いで!」

 岳は慌ててうなずき、妻を抱き寄せた。

「家に着いたら…電話をしておくれ」

 キュア・ホワイトは踵を返し、戦いの場を見つめた。

 チャンスと見て、キュア・ホワイトは混戦の中に跳び込み、

キックを放ってベルゼイを蹴り飛ばした。

 地面に向かって吹っ飛んできたベルゼイに、キュア・ブラッ

クがパンチを喰らわせ、ちょうどジュナに向かって叩きつけら

れた。激突したベルゼイとジュナが同時に倒れた。

「まったく、なんでよりによって今夜に!?」

 怒鳴るキュア・ブラックの横に、パートナーが着地した。

「わざわざこの時を狙って襲ったの?」

「混乱を巻き起こすのに時間を選びはしない」

 ベルゼイが進み出て、手を差し出した。

「さあ、プリズムストーンのパワーはどこにある?」

「それは…

「ブラック!」

 ホワイトがたしなめる。

「来る!」

 ブラックが遮り、大きくとんぼ返りをして敵のエネルギーブ

ラストを避けた。ホワイトの伸ばした腕の上に着地したブラッ

クが体勢を保つと同時に、ホワイトが回転して敵に向かってブ

ラックを跳ね返した。

 ジュナに向かって、回転パンチで迫るブラックの攻撃は避け

られそうもなかった。ジュナは身を翻して、軸足と反対の足を

蹴り出そうとしたが、ホワイトがすでにジュナの足元にスイー

プ・キックを放っていた。

 ホワイトの伸ばした手にキュア・ブラックは手を突いて、そ

の手を軸にして逆さまにバランスを取りながら旋風脚を放った

ので、ベルゼイは塀にまで叩きつけられた。

 プリキュアはその足で再び立ち上がると、互いに並んで敵を

睨みつけた。

 再度攻撃をしかけたのはホワイトが先で、腕を振り上げて拳

を叩きつけようと前に突進した。ジュナは手を伸ばしてホワイ

トの小さな拳を受けとめようとしたが、少女はいきなり身を低

くして地面スレスレに滑るように迫った。反対にキュア・ブラ

ックが跳び蹴りで襲いかかり、ホワイトがジュナのバランスを

崩してくれたおかげもあって、大男は大きくひっくり返った。

 倒れたジュナの上に着地したブラックは、間髪入れずに勢い

に乗じてベルゼイにパンチを叩き込んだ。ブロックしたベルゼ

イだったが、地面から伸びてきたホワイトのアッパーカットに

顎を撃ち抜かれて2フィート上に吹っ飛んだ。

 ブラックはパートナーの手を掴んでグルグル回転し、立ち上

がってきたジュナをいきなりぶっ飛ばした。

 この戦いの趨勢を支配したプリキュアが、互いの背中を合わ

せて、手を握りあった。

 だがさらに攻撃しようとした二人の前に、新たな敵が降りて

きて、蹴りをかましてきて二人を分断した。レギーネはさらに

両手を振るって、別々の方向に二人を吹っ飛ばした。

「くらえ!」

 叫んだジュナが、両手を広げて鏡のようなものを形成した。

強烈な閃光がホワイトの目をくらませ、再び見えるようになる

と、路地の半分を覆うほどの大きな立方体の中に閉じこめられ

ていた。

「ホワイト!」

 キュア・ブラックが慌てて辺りを見回したが、パートナーの

姿が見えなくなって不安が募った。

「ホワイトをどこにやったの!?」

「ブラック!私はここよ!」

 ホワイトは立方体の面に体当たりしたが、跳ね返されてしま

った。

「私はここなの!ブラック!ここよ!」

「聞こえはしない」

 腕組みしたジュナが静かに言いはなった。

「闇が光を曲げ、我々の姿を全て跳ね返しているのだ。外から

はここは何もないようにしか見えない。お前の声もな」

「ここから出しなさい!」

 ホワイトが拳を振るった。

「私が本気で怒る前にね!」

「お前とここで戦うつもりはない」

 ジュナの目がスッと細くなった。

「わかっているぞ、お前たち二人は分断されてしまうと戦えな

くなる。今回はお前たち二人を一度に片付けるという作戦はと

らないことにしたのだ」

「そんなこと、させないっ!」

 ホワイトは突進したが、ジュナがまたもや前に鏡を張った。

その仕掛けに息を呑み、ホワイトは突撃を中断して、背後に飛

び退いた。

「いいぞ、そのあっけにとられた顔は」

 ジュナがほのかを嘲笑った。

「レギーネ!やったぞ!」

 ジュナの張った鏡が立方体の中から投げられ、それを女戦士

が受けとった。立方体の中の二人は外で繰り広げられる戦いを

見守るしかない。

「パートナーに会いたいというなら、会わせてやるぞ!」

 ベルゼイが手を伸ばし、レギーネが放り投げたザケンナーを

受けとめるのをホワイトは目にした。そこに赤い巻き毛の女が

鏡を掲げ、魔物に光線を浴びせると、ショックを受けているキ

ュア・ホワイトと寸分違わぬ姿がそこに出現した。

「ホワイト!」

 キュア・ブラックが拳を握りしめた。

「返してもらうわよ!」

「ブラック!それは私じゃないの!」

 ホワイトは絶叫しながら激しく立方体の壁を叩いた。

「ブラックぅ!」

「返してほしいか?では、お望み通りにしてやろう!」

 ベルゼイが手を振りかぶり、偽キュア・ホワイトの背中に拳

を撃ち込んだ。ベルゼイの拳はザケンナーの霧を撒き散らしな

がら胸元に突き抜け、偽の血が噴き出した。

「ホワイトぉ!」

 キュア・ブラックの瞳孔が、串刺しになった親友を目の当た

りにしたショックでスッと小さくなった。

「ホ…ホワ……イ…

 ベルゼイが拳を引き抜くと、偽キュア・ホワイトはごふっと

息を漏らして軽くドサッと音を立てて地に崩れ落ちた。胴体の

穴からドクドクと血が流れ、目は閉じていた。物言わぬ死体と

化して頭が横を向いて地面に伏した。

「まず一人」

 勝ち誇って言ったベルゼイに、ブラックはガクンと膝をつい

た。

「それは私じゃないの!」

 喉が裂けるばかりにホワイトが叫んだ。

「ブラックっ!私はここよ!それは私じゃないの!」

「パートナーを救おうという意志がお前たちに力を与える」

 ジュナがホワイトの背後から言った。

「だがキュア・ブラックはお前のニセ者の死を目にして、簡単

に落ちるだろう。あっちを片付ければ、お前もたやすく始末で

きるというわけだ」

「どうだ、相棒が死んだのを目の当たりにした感想は?」

 地上に降りたベルゼイが、キュア・ホワイトの姿をしたザケ

ンナーの死骸を、つま先で小突いた。

「…殺してやる」

 あふれる涙に拳を握りしめて、キュア・ブラックが微かに呟

いた。

「何とも簡単なものだ」

 言葉を続けながらベルゼイが進み出る。

「この虫けらめが」

「…殺してやる」

 少し声が大きくなったが、なぎさの口からはまだはっきり出

ていない。

 ベルゼイはゆっくりと、跪いた少女に近づいてくる。

「今までさんざん手こずってきたのが、まったく恥ずかしいわ

い。あんなはずじゃなかったのだ」

「殺してやる…殺してやる…

 絞り出すようなブラックの声がだんだん大きくなる。

「殺してやる…殺して…

「ああん?何を言っている?」

 腕組みしたベルゼイがニヤリと笑う。

「殺してやるうううううっ!!」

 絶叫したブラックが、キッと顔を上げた。ハッと目を見開い

たベルゼイの前で、少女の姿がサッと消え、いきなり至近距離

に出現した。ブラックに鉄拳を土手っ腹に叩き込まれ、ベルゼ

イが悲鳴をあげた。

 攻撃から後退しようとしたベルゼイに、ブラックが再びパン

チを繰り出し、今度は衝撃波すら生じた一撃に、ベルゼイは路

地の突き当たりまで吹っ飛ばされた。

 少女は一瞬で背後に現れ、キックの雨を降らせた。

 ベルゼイは苦痛に悲鳴をあげたが、その声すらもベルゼイを

殴り続ける少女の半狂乱の絶叫にかき消されて、聞こえなくな

ってしまった。

 慌ててレギーネが割り込んできたが、ベルゼイはすでに動く

こともできないほどに弱っていた。

「お前もだあっ!」

 ブラックが声を絞りだした。

「お前も殺してやるっ!みんなみんな殺してやるうううっ!」

「ブラック、落ち着いて!冷静になって!」

 ホワイトが壁に両手を突いて叫びだした。

「ブラックっっ!」

 ジュナが立方体からやすやすと抜け出て、戦いに加わった。

ジュナの加勢で、狂戦士と化した少女は塀に投げつけられたが、

キュア・ブラックは壁にはね返るや、残像を三つも残して再び

突進した。

 親友が三人の敵を同時に相手にしている様子に、キュア・ホ

ワイトは恐怖した。怒りがパワーを引き出してはいるが、だん

だんとダメージが深くなっているのは明らかだった。

「ブラック…

 三人を吹っ飛ばしたものの、ブラックも距離を取って、片膝

をついてしまった。

「ホワイト…ホワイト…

 涙が再び流れ落ちた。

「待ってて…、待ってて、ホワイト…。もうすぐ行くからね…。

…こいつらを道連れにして」

「ブラック!落ち着くメポ!」

「メップル…

 キュア・ブラックは拳を掲げて、地面に当てた。

「だいじょうぶ。あの三人を倒せば、光の園は救われる。そし

たら、また新しい守護者を見つけて、みんなを平和に暮らせる

ようにしてね。ジャアクキングも、あの三人からパワーを得ら

れなきゃ、復活できないんだから」

「な、何言ってるメポ!」

 メップルが元の姿に戻った。

「ほのか…

 キュア・ブラックは再び敵を睨みつけ、キッと目を吊り上げ

た。

「これは、ほのかのぶんだああああっっ!」

 姿がかすむほどに走り出したブラックは、三人のところに躍

り込むと、身体をひねって、三人全員を両足と片手で押さえ込

んだ。

「ブラック・サンダーっっ!!」

 空いている手を上空に向けて差し出すと、黒い雷撃が一瞬で

湧き上がった。

「バカな!」

 レギーネがもがきながら叫ぶ。

「ホワイト・サンダーが無ければ、お前のパワーはバランスを

失って…

 驚愕に見開かれた目。

「いやあああああああああっっ!!」

 パワーが増幅され、そして集約しながら、周囲のものを破壊

していく。

「ブラックぅ!」

 キュア・ホワイトが立方体を必死で殴った。

「だめえっ!死んじゃだめえっ!」

 ホワイトが後ろに飛び退くと、手を伸ばした。

「ホワイト・サンダーっ!」

「ダメミポ!」

 メップルが叫んだ。

「ホワイト、バランスを失ってしまっては、パワーが暴走して

しまうミポ!」

「やるしかないの!」

 ホワイトが振りかぶった手に、パワーが集まっていく。

「マーブル・スクリューっっ!」

 純白の電撃が壁に激突し、反動で少女を後退りさせた。後ろ

の壁にまで押し返され、ホワイトは両足をぐっと壁に押し付け

て踏ん張り、前に身を屈めると、絶叫とともにパワーが増大し、

手が焼けつきだした。

「なぎさあああああっっ!!」

 闇の壁からパワーが突き抜け、木っ端微塵に撃ち砕いた。絶

叫とともに、白い電撃がパートナーに向かって放たれ、そのパ

ワーと一体になった。

 一瞬で苦痛が消え去り、温かなものが湧き上がってきた。

 エネルギーが消え去ると、キュア・ブラックはガクンと両膝

をつき、前のめりに顔から倒れ込んだ。

「なぎさ!」

 小さな星屑になって粉々になったザケンナーなどには目もく

れず、キュア・ホワイトが駆けてきた。ミップルも腰から飛び

出して、泣いているポルンを抱えているメップルに駆け寄った。

「なぎさ!」

 ホワイトは膝をついて親友を抱き起こし、膝枕した。

「なぎさ…

 ゆっくりと、キュア・ブラックが目を開けて、見上げた。

「ほ…の…か……?」

「なぎさ…

 涙があふれて頬を流れ、栗毛の少女に落下した。

「ほのかっ!」

 バッと起き上がるや、なぎさはほのかを抱きしめた。プリキ

ュアのパワーがすっと消えていった。

「ほのか!ほのか!ほのかぁっ!」

 なぎさはほのかをギュッと抱き寄せ、顔を埋めた。

「で、でも…確かにあの時…

「あれは私じゃなかったの」

 少女を抱き返しながら、ほのかがそっと言った。

「あれは、私じゃなかったの。私はだいじょうぶ。安心して」

「ほのか…、わ、わたし…怖かった!」 

 なぎさの声がしゃがれた。

「怖かったあああ!」

「なぎさが?」

 身を起こして、ほのかはなぎさを見つめた。

「怖かったのは私のほうよ!あとを追って死ぬだなんて、私が

喜ぶとでも本気で思ってたの!?ねえっ!?」

「ごめん…

 なぎさは目をしばたたかせて、涙をこらえた。

「ほのかが死んだと思って、わ、わたし…

 言い終えることもできず、なぎさはほのかの胸に顔を埋め、

さらに泣きじゃくった。

「ごめんねっ!」

「こっちだってメポ!」

 メップルがいきなり口を挟み、二人の横に飛び出してなぎさ

を睨んだ。

「あんなこと、二度とごめんだメポ!」

「ほのかもミポ!」

「うわああん、こわかったポポ!」

 ポルンがほのかに飛びつき、袖にすがりついて泣きわめいた。

「もうおいていかないでポポ、ママ~」

「ママ?」

 なぎさの髪を撫でる手をとめて、ほのかはポルンを抱き上げ

た。

 ようやく息を整えて、なぎさは身を起こした。

「ポルンたら、ほのかのことをママだと思いこんだみたい」

 なぎさは涙を拭いながら苦笑した。

「パパもだポポ!」

 ポルンはぴょんとほのかからなぎさに飛び移り、胸にしがみ

ついた。

「あぶないことしちゃダメポポ!」

「パパあ?!」

 困った顔で「子供」をあやすなぎさ。

「なんでわたしがパパなのよ?」

「だってえポポ!」」

 半泣きのまま叫んだポルン。

「良いパパになってね、なぎさ」

 戦うことをしばし忘れるタイミングを得て、ほのかが嬉しそ

うに言った。

「もうっ、わたしは女の子だっつうのに…

 そう言いつつもなぎさは、ケガしてない手でポルンを抱いて、

立ち上がった。

「うちに帰りましょう」

 ほのかもミップルとメップルを抱いて静かに言うと、二匹は

携帯電話のような形のカードコミューンに姿を変えた。

「大変な夜になっちゃったわね…

「うん…

 なぎさもポルンを連れ、二人で一緒に歩き出した。

 やがて、なぎさは手を伸ばし、ほのかと腕を組んだ。

「ほのか」

 そっと声をかけるなぎさ。

「なあに、なぎなぎ?」

 ほのかが顔を向けて微笑む。

「ほのかが無事で、ほんとによかった」

「私だって…

 そっと顔を寄せると、ほのかはなぎさの頬にキスをした。

***

 ベッドのなぎさの横に腰をかけて、ほのかはなぎさを見下ろ

した。

 なぎさは大きめのTシャツを着ただけの姿で、ぐっすりと眠

っているようだった。その夜に起こった戦いと、すべて決着が

ついてなぎさの電話で連絡した後、なぎさはあっという間に寝

込んでしまったのだが、ほのかにとっては驚くことでもなかっ

た。

 手を差し伸べ、ほのかはそっとなぎさの目にかかっていたほ

つれ髪を払ってやると、その手をなぎさが握った。

「起こしちゃった?」

 身を屈め、ほのかが静かに訊いた。

「ううん、起きてた」

 なぎさは目を開け、愛おしげに手を伸ばしてほのかを自分の

上にのしかかるように抱き寄せた。

「ほんとに、ほんとに、ほのかが無事で良かった」

「わかってるわ、なぎなぎ。私も同じよ」

 耳元に囁いて、ほのかは少し身を起こし、たがいの額を合わ

せた。ほのかはなぎさの反対の手もとって、両手を頭の上に押

し付けると、指を絡みあわせた。

 二人は互いに見つめ合い、そして、目を閉じると唇を重ねた。

 顔を離すと、ほのかは二回、三回とキスを続ける。なぎさは

ゆっくりとつないだ恋人の手を離し、ほのかの身体に手を回し

て、完全に自分の上に抱きあげた。いつの間にか二人のキスは

ますます激しくなり、なぎさは両脚でほのかの腰を抱え込んだ。

 ちょっと顔を離して、二人は目を開けた。ほのかはニッコリ

微笑みかけると、また顔を寄せて頬にキスすると、そのまま首

筋にそっと移って、そこで軽く歯を立てて、ちゅっちゅっと吸

いだした。

 栗毛の少女は喘ぎながら、ほのかの背中に回した手に力を込

めてさらにもっとと促した。一段落して、ほのかは身を起こし、

キスしていたできた赤いキスマークを目にして満足した。再び

なぎさを見つめてニッコリしたほのかを、再びなぎさが抱き寄

せる。

 たがいの舌がまた絡み合い、まもなく二人とも息づかいが大

きくなって、互いの口の中に喘ぎを漏らしだした。

 黒髪の少女がためらいがちに、自分の身体を恋人に擦りつけ

だすと、口の中に強烈な反応が返ってきた。二人が喘ぎ声をあ

げだしたちょうどその時、かかった声に二人は固まってしまっ

た。

「なにしてるポポ?」

 ハッとした二人が振り返ってベッドの脇を見ると、そこには

ポルンが座っていて、好奇心に満ちた顔で見つめていた。しか

もその後ろには、メップルとミップルもポップコーンを分け合

いながら見物していた。

「ねえ、どうして二人でかさなりあってるポポ?」

 小首を傾げたポルンは、片耳で目を覆っていた。

「見るなあっ!」

 叫んだなぎさが、後ろにあった枕を引っ掴んで、三匹をベッ

ドから押し出した。

「もうっ!ぶっちゃけありえないっ!」

***

「なぎさっ!」

 ほのかが親友に声をかけ、一緒に学校に向かった。朝の挨拶

を交わし、ほのかは恋人の手を見やった。

「ねえ、今日はもうラクロスできるの?」

「うんっ!」

 なぎさは右手を掲げ、わきわきと指を曲げて見せた。

「お医者さんが、もうどんなにハードにやっても大丈夫だって!」

「おめでとう!」

 ほのかが笑顔でお祝いした。

「がんばってね!」

「当然!」

「おはよう、ほのか、なぎさ!」

 莉奈が駆け寄ってきた。

「今日は復帰ね、S・K!」

「うんっ」

「S・K?」

 キョトンとするほのか。

「どうしてみんななぎさのことをS・Kって呼ぶの?ケガをし

た選手のことをラクロスではそう言うのかと思ってたけれど」

「え、え?」

 なぎさが真っ赤になる。

「き、気にしないで!」

「おはよ、おはよ、おはよっ!」

 志穂がなぎさの背中に嬉しそうに飛びついてきた。

「もう治ったんだってね、S・K!」

「志穂ったら!」

 親亀子亀のように背中に乗った友人に、なぎさが笑った。

「ねえ、それって何の意味なの?」

 ほのかがムキになって訊く。

「ええ?知らなかったの?」

 志穂が目を丸くする。

「でもでもでも、ほのかがなぎさのことをそう呼んだんだよ!」

「ははあん」

 莉奈が悟ってニヤッと笑った。

「なぎさったら、ほのかに何も言わなかったから、ラクロス用

語だなんて思ったのね」

「莉奈!しーーーーっ!」

「どういう意味なの?」

 わけがわからず、ほのかが訊いた。

「私、なぎさのことをS・Kなんて呼んだこと無いわよ」

「言った言った言った!」

「よーく考えてみて」

 大慌てのなぎさをよそに、莉奈が言った。

「ラクロス部員がみんな知っていて、からかうようななぎさの

呼び方は?」

「『なぎなぎ』かな」

 ほのかがあっさり言った。

「でも、そんなのどこでも言ってるし…

「違う違う違う、それじゃSにもKにもならないでしょ!」

 やっとなぎさの背中から降りて、志穂が言った。

 ほのかはあご先に指を当てて考えこんだ。

「S・K……S・K…、S……、K……こねこ…?S……

 突然ほのかがハッとした。

「『セクシー仔猫ちゃん』!?」

 がっくりとうなだれたなぎさに、ラクロス仲間がはやし立て

た。

「なぎさはほのかのセクシー仔猫ちゃん!」

 莉奈がなぎさに抱きついて、ぐりぐりと拳を押し当ててから

かった。

「じゃあなぎさ、一ヶ月以上もみんなからそんな呼ばれかたを

してたの!?」

 呆けたように笑いながら、ほのかが訊いた。

「本当に?あ、あはははははは!」

「ほのかぁっ!」

 ほのかはのけぞって大笑いした。

「あは、あはははは!あはははははは!あ、あ、お腹が痛い~!」

 なぎさがムッとして目を伏せた。その顔は完全に真っ赤に染

まっていた。歩き出していた友人たちになぎさはヤレヤレと手

を振った。

「もう…ほのかには知られたくなかったのに…

「かわいい呼び名じゃないの」

 ほのかが愉快そうにそう言って、再び並んで歩き出した。ま

だきまり悪そうな親友に、ほのかは顔を寄せて耳元に囁いた。

「放課後、うちで、ね。わかった、仔猫ちゃん?」

 そしてそっと耳に息を吹きかけると、なぎさはハッとして立

ちつくし、口ごもった。

「う、うん!わ、わかりましたあっ!わか…

 なぎさはまたうつむいて、激しく赤面した。

 ほのかはニッコリして、なぎさの手をとった。

「さ、行きましょ、なぎなぎ。遅刻しちゃうよ!」

「うん、行こ行こ!」

 二人は手をつないで、一緒に駆け出した。

 

 

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